陽子線治療における最適なホルモン治療

陽子線治療の成績で論文、Cancer Med. 2018 Mar;7(3):677-689.より5年PSA非再発率を紹介した。

今日、同じ患者を対象とした中間リスク、高リスクに対してのホルモン治療の期間に関する遡及的分析を行った以下の論文を読んだ。
Cancers (Basel). 2020 Jun 25;12(6):1690. full text

論文中に使われている用語
Androgen deprivation therapy(アンドロゲン除去療法):ADT
high-dose proton beam therapy(高線量陽子線治療):PBT

2008年1月から2011年12月の間に中間リスクの520人と高リスクの556人のPBTを受けた患者が対象であり、各病院が各患者にADTを適用するかどうかを決定した。
中リスク患者の約50%と高リスク患者の88%がADTを受けた。
ADTの期間は広範囲で、高リスク患者の34%が6か月以内に治療され、27.6%が24か月以上治療された。

表1に患者特性が示されていて、NCCNリスク分類の因子の数毎の患者数が書かれている。リスク因子数ごとの再発に関する情報が興味深かった。こう書かれている。
中間リスクの前立腺がん患者のうち、318人(61.1%)が1つのリスクファクターを持ち、170人(32.6%)が2つのリスクファクターを持ち、31人(5.9%)が3つのリスクファクター(T2b-2c、PSA 10-20ng/mL、GS 7)をすべて持ち、これらのグループの23人(7.2%)、18人(10.6%)、5人(16.7%)の患者にPSA再発が認められた。高リスクの前立腺がん患者のうち、リスクファクターが1つの患者は361人(64.9%)、2つの患者は129人(23.2%)、3つのハイリスクファクター(T3a-4、PSA>20ng/mL、GS≧8)がすべて揃っている患者は66人(11.8%)で、PSA再発はそれぞれ42人(11.6%)、24人(18.6%)、18人(27.3%)に認められた。
当然とはいえるが、リスク因子が多いと再発の割合は高い。
細かい分析をフォローする元気は今の私にはない。full text のConclusionsを以下に示す。
日本人の前立腺がん患者に対する高用量PBTおよびADTのこのレトロスペクティブな分析により、複数のリスク因子(すなわち、T2b-T2c、PSA値10~20ng/mL、またはGS 7)を有する中間リスクの前立腺がん患者には短期のアジュバントADTが必要であるが、単一のリスク因子を有する患者には不要である可能性が示された。同様に、高リスクの前立腺がん患者に対しては、6ヵ月以上のADTと高用量PBTを併用すべきであるが、リスク因子が1つしかない患者ではADTの効果が低下する可能性がある。リスク因子の数に応じた高リスクPCに対する適切なADTの期間は、無作為化試験で決定されるべきだが、本研究では、単一および複数のリスク因子を持つ患者に対して、それぞれ12ヵ月間および21ヵ月間のADTと高用量PBTの併用が望ましいことが示唆された。
レトロスペクティブな研究ではあるが陽子線治療に関してリスク分類、リスク因子の数にもとづく最適なホルモン治療の期間を示唆する研究が発表されたのはいいことだろう。

……2023/12/18に追記
村上基弘氏の医学博士学位論文、中間リスク・高リスク前立腺癌に対する陽子線治療で併用する最適なホルモン療法の検討を見出したので、論文をリンクする。

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