前立腺がんに対する手術療法 川島 清隆氏の講演

キャンサーチャンネル「前立腺がん」に関するビデオに掲載されている前立腺がんに対する手術療法 川島 清隆をみた。興味深い映像、発言があったので、書き取り、紹介する。

発言に関する注、コメント等は紹介の後に書く。
( )私の補足の言葉

なお、川島氏は動画撮影時は栃木県立がんセンター 泌尿器科の部長であり、現在は熊谷総合病院の泌尿器科の医長だ。
着任の挨拶

8分40秒
この神経(男性にとって大事な神経)は近年、腹腔鏡の解像度がよくなって、手術中肉眼で確認することができます
(白い筋の様な神経をみることができます)

15分04秒
(画面の表示)
ロボット支援前立腺全摘除術の特徴
短所
1.設備投資が高額である
2.消耗品、メインテナンスが高額
18分50秒
施設間、術者間で成績の差は大きいと思います
その病院で手術の相談をされるときには、先生にその病院での年間の手術の件数、根治性(断端陽性率、再発率)、出血量、神経温存の成績、失禁の割合、このようなことをきいてみるとよいかと思います  1)
19分53秒b
がんが進行してしまうと、(T3となり)前立腺の被膜を破ったり、精嚢に浸潤した状態になると一般的には手術では取り切れないとされていますが、この中の一部も頑張れば、手術で摘出することが可能です  
26分34秒
(おなじみのGrimmさんの高リスクの図をみせて)
手術は時間が経つに従って再発しやすくなっています  2)
27分35秒
ヨーロッパのガイドラインでは場合によってはリンパ節転移があるものまでも厳密に選択していけば適応があるものがあるとしています  3)
28分2秒
我々も高リスクに対して拡大リンパ節郭清を行っているのですが、23%にリンパ節転移が認められます  4)
34分57秒
断端陽性の場合、再発はその50%ぐらいといわれています  5)

1) NCCN Guidelines 2019年 第4版 2019年8月19日 のPROS-Eでは以下のように書かれている。
手術の原則
根治的前立腺摘除術:
・手術件数の多い施設の経験豊富な外科医が施行する場合は、一般的に良好な成績が得られている。
2) PCRSGの高リスクの図をみると通常、2015年 1月12日の投稿のような感想になるかと思う。
やはりハイリスクになれば、「EBRT+Seede+ADT」(トリモダリティ)の成績が良く、手術は避けた方が賢明であることが分かります
川島氏は図を紹介した後、「再発しやすくなっている」とさらっといって次の説明をしているのはなかなかのものだと思った。

3) European Association of Urology (EAU)のGuidelines on Prostate CancerのP.64 の表9.7に以下のように書かれている。
Furthermore, RP is optional in highly selected patients with cT3b-4 N0 or any cT N1 PCa in the context of a multimodality approach.
prostate cancer (PCa)
N1の場合も手術は高度に選択された患者でのオプションとのことだ。ただし、推奨レベルはCであり、そのことを特に川島氏は言及していない。

4) 東北4施設の癌治療学会2013での発表において、以下のように報告されていまる。

リンパ節転移
低リスク  0.35%
中間リスク 1.1%
高リスク  6.0%

23%は比較すると少し多いかなという印象。

5) 腹腔鏡下前立腺全摘除術における切除断端陽性率と予後の検討のFig3 をみるとpT3例における切除断端とPSA非再発率をみると、5年で60%弱なので、「断端陽性の場合、再発はその50%ぐらいといわれています」ということは手術をよくされる先生方の常識なのだろう。

動画をみた後、川島氏、治療成績の論文、きっと書かれていると思い検索し以下の論文をみつけた。
根治性向上を目指した解剖学的拡大手術の可能性について

断端陽性率も改善されているということで、PSA非再発率もそれなりにいい結果だ。だからこそ、あのような講演ができるのだろう。

高リスクでも頑張って、手術をされている医師のいる限り、立腺がん 治療の選択:[がん情報サービス]ページが改訂されるのは遠い先ということだろう。

……掲示板の2015年 3月13日の投稿より

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