上記の論文はGoogle Scholarで2021年と指定し、検索してみつけたものだ。
このcase study の内容そのものより、Introduction に書かれていることに興味ひかれた。こう書かれている。
オリゴメタスタシスは、限られた数の転移のみが癌患者で確認される転移の型です。この概念は、1995年にHellmanとWeichselbaumによって最初に提案されました[1]。多くの種類の癌における遠隔転移のある患者の標準的な治療法は全身療法ですが、オリゴメタスタシスは、疾患を治療するために、手術や放射線療法を含む根治的局所療法で治療することができます。Japanese Journal of Lung Cancer―Vol 56, Supplement, Dec 1, 2016―www.haigan.gr.jpにも同様な記述があり、さらにこう書かれている。
そこには,「転移があるのに完治する可能性がある」という魅惑的な意味が含まれている.魅惑的というのはなかなか手が届かないという含意があるといえる。「前立腺がんガイドブック」について オリゴメタスタシスで完治についての武内務氏との掲示板でのやりとりを書いた。
次に近年にオリゴメタスタシス対する治療のエビデンスが蓄積されてきていると書かれ Stereotactic Radiotherapy (SABR)によるSABR-COMET試験 [3]と呼ばれるランダム化比較試験が紹介されている。次の記述。
十分に管理された原発腫瘍とオリゴメタスタシスを有する99人の患者が緩和ケア群とSABR群の間で1:2の比率でランダム化された。SABR群は、全生存期間を大幅に延長することが示されました。緩和ケア群の5年全生存率は17.7%でしたが、SABR群の全生存率は42.3%でした。ただし、前立腺がんだけを対象としたものではない。参照されている論文にはこう書かれている。
最も一般的な原発腫瘍の種類は、乳房(n = 18)、肺(n = 18)、結腸直腸(n = 18)、および前立腺(n = 16)そうして非小細胞性肺癌に関してのランダム化比較試験の結果 [4] の概要が書かれている。
「無増悪生存期間の中央値は、維持療法または観察群の5.6か月から局所療法群の14.2か月に改善、全生存期間の中央値も17.0か月から41.2か月に改善し、この試験は、転移性局所療法群で観察された有意な有効性の利益のために早期に終了した」ということで先に引用した魅惑的という言葉が少しは感じさせるランダム化比較試験の結果だろう。
「特定の原発がんの種類に焦点を当てたオリゴメタスタシス対する治療に関しては、さらなる証拠が必要」と書かれている。
前立腺がんに関するランダム化比較試験は[7]、[8]が紹介されている。
仔細には確認していないが、それはやはり、「転移があるのに完治する可能性がある」という魅惑的な意味を示唆するものではない。
[1] J Clin Oncol. 1995;13:8–10.
[3] J Clin Oncol. 2020;38:2830–2838.
[4] J Clin Oncol. 2019;37:1558–1565.
[7] JAMA Oncol. 2020;6:650–659.
[8] J Clin Oncol. 2018;36:446–453.
……2021/03/24 に追記
[7]に関しては積極的放射線治療で転移のある前立腺がんの進行が遅延 | 海外がん医療情報リファレンスで説明されている。
こう書かれている。
体幹部定位放射線治療(SABR)が少数の遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺がん患者の病勢進行を遅らせる可能性があることが示された。
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