・日本の粒子線治療施設の紹介 - 粒子線治療
多いというべきなのか少ないのか私には分からない。長い間先進治療で行われていてその結果は必ずしも十分でないということが指摘されていた。そのことに関して掲示板に粒子線治療 先進医療会議 第33回 議事録 と題して投稿して2015年8月6日 第33回 先進医療会議議事録及び粒子線治療等について PDF 資料 先-5を紹介した。
資料をみると重粒子線治療では多施設の治療の報告がされているにも関わらず、陽子線治療では単施設しか報告されていないのは不思議だった。陽子線治療に関しては連携弱いのかな、プロトコルの統一など共同研究の意図ないのかなと思っていた。そのような素朴な疑問は議事録でも指摘されていて、指摘された問題点を抜粋して掲示板に書いた。
重粒子線治療、陽子線治療が保険適用になったということで、その経緯を厚生労働省の会議の議事録等で確認する元気はもう私にはなかった。
寡分割救済放射線治療で石川仁氏をしった。現在は量子科学技術研究開発機構QST病院の副病院長だ。
検索の過程で寄稿-2020年度阿部賞受賞:石川仁先生(QST病院) | 群馬大学 腫瘍放射線学教室に至る。先進医療会議のことについて書いている。
順風満帆かに思えた生活は2015年に大きく変わりました。先進医療会議が粒子線治療を保険診療か自由診療にするかの決着をつける検討を開始したのです。私を含め粒子線治療に携わってきた医師にとって暗黑の時代が訪れました。当時の粒子線治療、とくに陽子線治療は、X線治療の延⻑として扱いやすい反面、照射範囲、線量分割、併用療法などの施設間差が大きく、先進医療の出口である保険診療のための準備、すなわち他治療と結果を比較し、その有用性を解釈することが十分にできていませんでした。オールジャパンでの取り組みはほとんどなかったのです。一方、重粒子線治療は、放医研での臨床試験プロトコールを新規施設が採用し、放医研で研修を行ってから開始するという群馬大学での取り組みが手本となり、施設間差は少なく統一された治療を行っていましたが、施設数がまだ少なかったため症例数が十分ではありませんでした。会議で指摘された問題点、先進医療継続の条件に関しても明確に書いている。
評価された結果は惨憺たるものでした。先進医療の継続は辛うじて認められたものの、①適応疾患の選定し、統一治療方針を作成する②全症例をキャンサーボードで適応判断後に治療を行う③結果を全例登録する④他の治療法と比較するためにシステマティックレビューを行う⑤コモン・キャンサーでは先進Bとして臨床試験を行う⑥これまでのデータをまとめる、などの条件付きでした。条件をクリアした経緯がその後書かれている。
保険収載で増加した前立腺がんの陽子線治療:がんナビには陽子線治療の保険適用に関して書かれている。
体制整備の一環として、国内7施設の陽子線治療のデータがまとめられた(JROSG2016-R12)(Iwata et al. Cancer Med. 2017)。前立腺がん患者1291人において、グレード2の直腸障害は4%、グレード2の尿路系障害も4%だった。5年の生化学的非再発率は低リスク群で97.0%、中リスク群で91.0%、高リスク群で83.2%となった。またシステマティックレビューを実施し(Ishikawa H, et al. Int J Urol 2019; 26:971-979)、2018年4月には前立腺がんに対する陽子線治療が保険収載されるに至った。最初から臨床試験計画をたて、複数の施設で実施しなかったかと思う。
さらに作られた施設を保険収載としないことの結果、患者が減ることをなんらかの意味で懸念した、あるいは建設費は安価なものではなかったからそのまま自由診療で高額な治療費で少ない患者しか使用しないという状況を避ける政治的な判断がどこかにあったのではないか。
これはまったくの推測であるが。
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