溝脇尚志氏の日本放射線腫瘍学会第32回学術大会での発表 外照射の進化

前立腺がんのX線外部照射はいま劇的に進化している:がんナビを読む。
日本放射線腫瘍学会第32回学術大会3日目のシンポジウム「前立腺癌各種治療法の特徴」において「前立腺癌に対するX線外部照射療法アップデート」と題されて溝脇 尚志氏(京都大学大学院医学研究科 放射線腫瘍学・画像応用治療学)が発表したものの概要紹介である。

いくつか関心のある事項があった。第一はよく小線源治療を推進している医師が小線源治療が外照射より優れているということを示すランダム化比較試験、ASCENDRE-RT試験に関することだ。
論文はInt J Radiat Oncol Biol Phys 2017 Jun 1;98(2):275-285.である。かつて掲示板で論文となる前の学会発表の段階で外照射、小線源治療ランダム化比較試験という表題で投稿していた。
この投稿ではPSA非再発率のグラフを添付している。この図を参照して以下の溝脇氏のいっていることを確認する。
この結果で重要なのは、2群のbPFSで差が開いてきたのが5年後であること。それまでに再発する人は“潜在転移”があり、それに対してはどの局所療法を行っても変わらない。5年以降になると線量の大きさが効いてくる。
「ASCENDRE-RT試験で使われた外部照射療法は3D-CRTによるもの」ということを改めて指摘している。
ランダム化比較試験で小線源の優位性が示されたといってもIMRTとの比較ではないことを認識する必要がある。

外照射のこの10年の進化を溝脇氏はいう。ひとつはVMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy)であり、こう書かれている。
「位置を合わせてから10分も経つと前立腺は動いてくるが、VMATは1-2分ででき、治療照射中(Intra-fraction)の精度も上がっている」という。
「患者さんに合わせて位置調整しながら照射できる画像誘導技術(IGRT)によって、さらに確実な照射が可能になってきた」との記述の後、こう書かれている。
また通常、腫瘍にしっかり照射できるように数mmから数cmの幅(マージン)を持たせて照射範囲が決められるが、IGRTによってマージンが縮小され有害事象も激減したと話す。
さらに治療法比較3で比較の表の参考とした William Wilcox氏の論文、J Med Imaging Radiat Oncol 2015 Feb;59(1):125-33.をあげ、「小線源治療の成績に負けない結果」と書かれている。
サイトのページ、Wilcox氏の論文で講演であげられているPSA非再発率について書いている。記事を書いたときはfull text が無料でみることができたが、今はダメだ。
また、トモセラピーによる10年間の治療結果(愛知県がんセンター)で紹介した富田氏の論文のPSA非再発率についても言及されている。

寡分割照射、SBRTと外照射は進化している。小線源治療は進化はみられないともいえるが、それは完成された治療ということだろうか。
それとも新規の技術的動向を私が単にフォローしていないだけだろうか。

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