ホルモン治療はCOVID-19の感染リスク、重症化を軽減?

男性ホルモンが関与か 新型コロナ感染、症状悪化―前立腺がん患者調査・イタリア:時事ドットコムという記事を読む。

検索し、参照した論文が以下のものであることがわかった。
Androgen-deprivation therapies for prostate cancer and risk of infection by SARS-CoV-2: a population-based study (n=4532) - Annals of Oncology

イタリアのパドヴァ大学のM. Montopoli氏を筆頭著者とする論文である。
ハイライトとして以下のように書かれている。
•SARS-CoV-2感染男性は女性よりも臨床転帰が悪い
•がん患者はSARS-CoV-2感染のリスクが高い
•アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者は感染症から部分的に保護されているようです
イタリアのヴェネト州の68の病院から、SARS-CoV-2感染の9280人の患者(男性4532人)に関するデータを解析したものである。
結論として以下のように書かれている。
私たちのデータは、がん患者は非がん患者よりもSARS-CoV-2感染のリスクが高いことを示唆しています。ただし、ADTを受けている前立腺がん患者は、SARS-CoV-2感染から部分的に保護されているようです。
次の仮説を提示している。
SARS-CoV-2の細胞侵入は、ウイルススパイク(S)タンパク質のACE2への結合と、TMPRSS2によるSタンパク質の プライミング:準備刺激 に依存する。TMPRSS2の阻害は、SARS-CoV-2感染の重症度をブロックまたは軽減するように機能する可能性がある。アンドロゲン枯渇療法(ADT)は、TMPRSS2のレベルを低下させるのでADTがSARS-CoV-2感染から前立腺がんに罹患した患者を保護する可能性がある

Table 3 にADTを受けた患者とそうでない患者の数について詳細が記載されている。

ADTを受けた患者 5,273人
新型コロナウイルス感染症 陽性者 4人 軽症 3人 重症 1人 ICU 1人 死亡 0人

ADTを受けていない患者 37,161人
新型コロナウイルス感染症 陽性者 114人 軽症 83人 重症 31人 ICU 13人 死亡 18人

表2には以下のように書かれている。
州の総人口は2,399,783人で 4,532人(0.2%)が陽性
すべての男性のがん患者 127,368人で 430人(0.3%)が陽性

がん患者が新型コロナウイルス感染症のリスクが高いとしてもホルモン治療が重症化リスクを軽減するというこの論文は少し慰めとなるものである。

……以下2020/05/09 に追記
TMPRSS2の関与に関してはTMPRSS2発現細胞を使うと新型コロナウイルス SARS-CoV-2が効率良く分離できる | 国立感染症研究所のAの絵で説明されている。説明文は次のとおり
受容体ACE2に結合した新型コロナウイルス SARS-CoV-2は細胞表面の酵素TMPRSS2によって活性化され細胞への侵入効率が増強される。

……以下2020/05/10 に追記
新型コロナウイルスは、いかに感染し、そして重症化するのか? そのメカニズムが研究で明らかになってきた|WIRED.jpにTMPRSS2について以下のように書かれている。
ウイルスはまず、表面にある突起状のスパイクたんぱく質を、宿主細胞のACE2受容体にぴったりと結合させる。すると、細胞膜にあるたんぱく質の分解酵素「TMPRSS2」や「FURIN」が、ウイルスのスパイクたんぱく質を適切な位置で切断し、ウイルスと細胞の融合を助ける。

かくしてウイルスは細胞内に侵入して遺伝物質(RNA)を注入し、わたしたちの細胞を“工場化”してウイルスを大量に自己複製させられるようになるのだ。
また、次の記述
TMPRSS2は男性ホルモンであるアンドロゲンの受容体でもあり、その発現量は男性に重症化する患者が多い原因となっている可能性も疑われている。


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