術後死亡例は2次発がん

黒薮哲哉『名医の追放』その2 術後死亡例はあったのかで滋賀医科大の民事訴訟において中日新聞 滋賀版の記事より滋賀医科大附属病院長の証言「術後の死亡例もある」を紹介した。
滋賀医科大事件、本人尋問で説明義務違反の構図が明らかに── 被告が続ける実りのない岡本医師への人格攻撃 [特別寄稿]黒薮哲哉 : デジタル鹿砦社通信にもう少し詳しい説明が書かれていた。の記者会見での井戸謙一弁護士の発言。
松末院長が前回の尋問で2次発癌で死亡した例があると証言したことを受けて、それが不正確な認識であることを指摘しました。病院の事例調査検討委員会では、この患者のケースを因果関係不明と認定しています。
死亡例は2次発がんだったのだ。術後死亡例といっているので、術後ほどなくして死んだのだと思い込んでいた。

2次発がんといえば、術後5年以降だろう。かつて掲示板に投稿し参照した論文及び新たに調べた論文を参照して以下に書く。

1. University of Chicago Pritzker School of Medicine のStanley L. Liauw 氏を筆頭著者とする論文
Second malignancies after prostate brachytherapy: incidence of bladder and colorectal cancers in patients with 15 years of potential follow-up.
以下のように書かれている。
放射線療法の5年後に発生する2番目の悪性腫瘍は、潜在的に治療に関連していると定義された。
小線源単独 125人
外照射併用 223人
治療から5年後、2次発がん患者は以下のとおり
膀胱がん(n = 11)
結腸直腸がん(n = 3)
前立腺尿道がん(n = 1)

やはり膀胱がんが多い模様。その後に書かれている統計上の話はさておき、結論としては「前立腺がんの放射線療法後、二次悪性腫瘍を発症するリスクはわずかですが増加する可能性がある」と書かれている。

滋賀医科大で膀胱がんで死亡した患者は小線源治療後、5年経っての発症かどうかわからないが、二次発がんと書かれているので、常識的に考えて治療後、一年、二年後に発症ということはないだろう。

滋賀医科大学 小線源治療 患者会 及び支援者の会のfacebook の投稿に2019年12月19日 中日新聞 滋賀版の記事を画像化したものが載っていて、こう書かれていた。
患者側の井戸謙一弁護団長は「死亡例とされる2件について、「病院の調査委員会では小線源治療が原因であるかについては「因果関係不明」と結論づけた。」
と指摘。
河内科長は因果関係について「可能性がある」と述べるにとどまった。
井戸弁護士のいう病院の事例調査検討委員会の認定を根拠にしているのは少し変だと思った。なぜならば、それは16人の外部委員の医師に不当に送るという指摘をし、評価を依頼したものが事例調査検討委員会でまとめられたものだから。 1)

もし、治療後、5年経っての発症ならば、「可能性がある」という言も頷ける。

2. Albert Einstein College of Medicine/Montefiore Medical Center のAryeh Keehn 氏を筆頭著者とする論文
Incidence of Bladder Cancer After Radiation for Prostate Cancer as a Function of Time and Radiation Modality

放射線治療を行った前立腺がん患者は346,429人で、そのうち6401人が膀胱がんを発症
結論として以下のように書かれている。
前立腺照射後の膀胱がんのリスク増加は、民族に関係なく、主に10年後に発生する。10年後の膀胱がんの発生の相対リスクは、外照射または外照射と近接照射療法の後よりも近接照射療法後の方が有意に高い。前立腺放射線療法後、特に近接照射療法後の膀胱がんは、一般に前立腺がんのない患者の膀胱がんよりも病期は低いが悪性度は高い。
3. University of Montreal Health Centre のElio Mazzone 氏を筆頭著者とする論文 
Long‐term incidence of secondary bladder and rectal cancer in patients treated with brachytherapy for localized prostate cancer: a large‐scale population‐based analysis

結論としてこう書かれている。
結論:小線源治療は主に二次的な膀胱がんのリスクを増加させ、程度は低いが直腸がんのリスクも増加させる。したがって、そのような患者のフォローアップが必要です。
二次発がんのリスクが増加するのは間違いないところで、滋賀医科大において発症した膀胱がんが二次発がんでないにしても2名も死に至ったのはフォローアップが十分であったかいささか疑問ではある。

1) 患者同意なくカルテを示す 滋賀医大、外部の医師に:朝日新聞デジタル

sankaku.jpg



この記事へのコメント