高リスクに対する手術について 日本放射線腫瘍学会シンポジウムより

日本放射線腫瘍学会第30回学術大会(2018年11月17-19日、大阪市)では、シンポジウム「最新エビデンスに基づく前立腺癌診療の現状と今後の展望」が開催され、そのレポート記事、高リスク前立腺癌に対する手術が増えて来た:がんナビを読んだ。

大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科学の野々村祝夫氏の発表の概要を報告したものだ。
高リスク限局性前立腺癌に対しては、ホルモン療法を併用した放射線療法が主に行われていたが、「以前は手術は少なかったが、最近は増えている」とのことだ。米国のデータからそのことをいっているが果たして日本においてはどうだろうか。

手術の長所、短所が書かれている以下の文は興味深かった。
手術の長所は、手術で採取された検体を使った正確なステージング(病期分類)と病理診断が可能であること、高齢者が多い前立腺癌患者では前立腺肥大症を合併することが多く、それによる排尿障害など局所症状が手術で改善することである。また他の治療法との併用療法が可能で、それによって予後が改善する可能性があることや、転移をきたす癌細胞の供給源を除去することによる予後改善の可能性も挙げられる。一方、手術の短所としては、入院が必要で、侵襲性があること、また尿失禁や性機能障害といった合併症が起こりうることがある。
他の治療法との併用療法が可能といっては救済放射線治療及びホルモン治療との併用をいうのだろう。PSA再発に対する対処と捉えるのではなくトリモダリティと捉え、その実施時期が手術の場合、比較的容易に分るということだろうか。

放射線治療との比較に関しては次のように書かれている。
米国の観察研究データベース(CaPSURE)から、手術、放射線療法、内分泌療法を受けた患者7538例を対象に、年齢とリスクで統計学的に調整して比較したところ、手術は放射線療法(外照射)やホルモン療法(ADT)よりも癌特異的死亡率が低いことが示されている。 1)
さらに次の文
米国の癌登録システム(SEER)のデータを用いた研究では、転移出現後の予後は手術(前立腺全摘除)群のほうが放射線療法群よりも良好だった。 2)
転移の場合の記述。
また転移がある前立腺癌でも前立腺を全摘したほうが予後は良いことが後ろ向きの研究で示されている。3)
残念ながら3)は無料で読める部分はほとんど情報がない。

1) Cancer. 2010 Nov 15;116(22):5226-34
2) Eur Urol. 2014 Apr;65(4):693-700.
3) Eur Urol. 2014 Sep;66(3):602-3.

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