転移性前立腺がん患者の予後因子は?

オープンアクセスジャーナルで奈良県立医科大 泌尿器科の田中宣道氏の業績に関して紹介した。
共著者となっている以下の論文をみいだした。
BMC Urol. 2014 Apr 29;14:33.

筆頭著者は冨岡厚志氏であり、この研究は1998年から2005年までにNara Uro-Oncology Research GroupでPADTを受けた256人の転移性前立腺癌患者が対象であり、奈良県立医科大病院他計20の病院である。
結論には以下のように書かれている。
Nadir PSAとPADTからNadirまでの期間は、転移性前立腺癌患者のコホートにおいて、CRPCと全生存期間の両方に影響を及ぼす要因であった。より低いNadir PSAレベルおよびより長いPADTからNadirまでの時間は生存および進行にとって良好であった。
Nadir 最下点
PADT: primary androgen deprivation therapy 第一のアンドロゲン除去療法
CRPC: castration resistant prostate cancer 去勢抵抗性前立腺がん

転移前立腺がんの場合、より低いnadir が予後にいいというのは分るが、より長くかけNadir に達したほうがいいというのはちょっと想定とは違う結論であった。サイトのホルモン療法による根治の可能性で紹介した金沢大学の並木氏の論文からそうではないかと思ったものだ。対象が限局がんであり、今回は転移しているがんであるので、違うということだろう。

full text には以下のように書かれている。
Nadir PSAに達するまでの時間がより長いことは、Nadir PSAレベルがより低いことと関連しており、これは単にアンドロゲン感受性の継続を示しているのかもしれない。最悪の予後と最短時間の関連性の原因となるメカニズムは明らかではない。PSAレベルの急激な減少は、前立腺癌の細胞死ではなく、PSAの進行に対するPADTの転写効果に関連している可能性があります。
転移している患者ということで予後はいいものではない。以下のように書かれている。
PADTからNadirまでの期間の中央値は9.45カ月(範囲1から64)だった。 患者の72.4%がCRPCに進行し、治療開始後の進行までの期間の中央値は13カ月(範囲1〜97)であった。 5年全生存率は63.0%、CRPCからの生存期間中央値は45カ月であり、追跡期間中に35.7%の患者が死亡し、そのうち癌による死亡およびその他の原因による死亡はそれぞれ27.6%および8.0%であった。
富岡厚氏は第98回日本泌尿器科学会総会でOP-411 ステージD前立腺癌患者の生存予後因子と題して発表している。

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