ブログにPSA検査、サイトに生検の合併症の比率という記事を書いた。これらの記事を少し整理し、追記という形で書いていく。
PSA検査
厚労省研究班におけるがん検診有効性評価ガイドラインの前立腺がんはがん検診ガイドライン 前立腺がんで公開されている。研究班構成をみますと厚生労働省のがん研究助成金により実施されたもので、国立がんセンターの濱島ちさと氏を主任研究者とするものだ。その有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン 本文によると前立腺がんの検診のPSA検査は以下のようになっている。
推奨グレードI:証拠不十分であり、対策型検診は「推奨しない」・前立腺がん検診ガイドライン・ガイドブック
任意型検診(自己負担の人間ドック)に関しては「個人の判断に基づく受診は妨げない」
日本泌尿器科学会のPSA検査に対する見解は以下のとおり
・PSA検査を用いた前立腺がん検診に関する見解
米国予防医学作業部会(US Preventive Services Task Force:USPSTF)の勧告案は(D recommendation)、すなわち、「不利益が利益を上回る」だ。
日本泌尿器科学会の見解は以下のとおり。
・米国PSTFの勧告に対する見解
ガイドライン案の段階で新聞報道され、それに対する見解として参考になるのは木村医師の前立腺がん集団検診でPSA検査は勧められぬだ。以下のように書かれている。
集団全体の死亡率を下げることを目的としている対策型検診と、個人の死亡リスクを下げることを目的としている任意型検診とは別物です。
生検
ブログに生検方法と題して書いている。日本アイソトープ協会市民講座 ..放射線治療とはで紹介した自分で選ぶ治療法〜放射線治療とはの中の「前立腺がんの自然史」をみると、がんは加速度的に大きくなるので、PSA検査でがんの疑いがあった場合、様子見、放置ということは考えられないと思う。「生検方法」の最後にこう書いた。
経直腸のほうが、入院不要で実施できる場合もあり(私がそうだった)、この方式で実施している病院は多いかと思うが、それでみつからない場合は経会陰を試みたほうがいいかと思う。
生検に伴う不利益
有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン 本文のP.21には不利益に関して以下のように書かれている。PSA検査は一般的な血液検査と同様であり、スクリーニング検査自体の不利益は存在しない。検診として考えると、過剰診断と精密検査に伴う偶発性・治療に伴う合併症が不利益に相当する。さらに、「血尿、血精子症、直腸出血などの軽微な偶発症の頻度は高いものの、これらの大半は処置を必要としないで軽快する。」と書かれている。そうして、「敗血症は0.4%とされている。国内から生検に伴う死亡例が2件報告されている。」と書かれていたので、敗血症の割合が私の記憶していたものと違うと思ったので、改めて、香川大学の筧善行氏を筆頭著者とする論文、Int J Urol. 2008 Apr;15(4):319-21.を読んでみた。
2004年から2006年の間に548病院で実施された212,065の生検のデータを元にした論文だ。
敗血症 0.07%
経直腸生検は0.09%、経会陰生検は0.007%
生検関連合併症の治療には、0.69%の症例で入院が必要だった。
改めて生検前に病院でもらった「前立腺生検を受けられる方へ(処置・検査説明書)に書かれている「3 生検を行わなかった場合」をみてみる。
確定診断ができませんので、前立腺癌の疑いのまま経過をみることになります。PSAが高く生検を受けない場合のことを端的に書いている。
有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン成立について
研究班構成をみると、分担研究者の群馬大の伊藤一人氏が平成19年(西暦2007年)10月31日に辞任している。また、2007年10月5日に4人の研究協力者が辞任している。(内二人は私の知っている東京厚生年金病院(当時)の赤倉功一郎氏、栃木県立がんセンターの川島清隆氏)厚生労働省研究班でこのようなことが珍しいことかどうかわからないが、本文にその経緯が詳しく書かれていて、P.34の「おわりに」以下のように書かれている。
本ガイドラインは作成開始から公表に至るまでの間、従来のガイドラインとは異なる様々な障害があった。ガイドライン・ドラフトを公開し、公開フォーラム終了後、研究班に参加協力していた泌尿器科委員全員が辞任するという不測の事態があったが、すでに研究段階から議論があり、確定版の公表が待たれている現状から、できるだけ早く公表すべきと判断した。このため、完成直前まで参加していた泌尿器科委員の意見が随所に残っているが、むしろ、この点は、実際の医療現場での理解を容易にするものと考え、ほぼそのままの形で記載している。------以下2019/01/11に追記
「前立腺癌の自然史」に関しては小線源療法で高い治療効果を 前立腺がんの小線源療法 日本メジフィジックス株式会社と題されたインタビュー記事で慈恵医大の青木医師が同じグラフで説明している。出典として渡辺泱(ワタナベヒロキ)氏と記されている。
少し調べ、渡辺泱 前立腺癌の自然史 日本臨牀 58巻 増刊号4号 2000 22 -32 であることが分かった。
辞任した伊藤一人氏は人間ドック誌の2012 年 27 巻 1 号 p. 7-16に「前立腺がんPSA検診:最新の動向と方向性」という記事を書いている。
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