腺友倶楽部主催のセミナーにおける岡本圭生氏の講演でこう書いた。
"excellent quality of life outcomes" を「好成績」と訳すのはどうしてだろう。この疑問に対する何らかの答えとなるだろう。
先に書いたブログでは二つの論文が対象であり、今回書くのはその1.であげたものだ。この論文の表題はAmerican Brachytherapy Society Task Group Report: Combination of brachytherapy and external beam radiation for high-risk prostate cancer.である。この論文は小線源と外照射の併用に関してretrospective studies と3つのrandomized trialsをレビューしたものである。RCTには私が外照射、小線源治療ランダム化比較試験で言及したASCENDE-RT Trial も含まれています。
岡本氏の引用した文は論文の終わりのほうでありその前の文を示す。
ASCENDE-RT study has shown impressive biochemical control benefits with the addition of a third way to intensify local therapy --the addition of a brachytherapy boost to external beam radiotherapy. Although followup is short, it is highly plausible that comparable benefits will be seen in distant metastases and overall survival as this trial matures.そうして次のパラグラフで以下のように続く。
Just as the use of adjuvant radiotherapy or ADT results in incrementally increased side effects, and early declines in quality of life, the addition of supplemental brachytherapy has also shown incremental increase in side effects.Google翻訳を以下に示す。
ASCENDE-RT試験では、局所照射療法を強化する第3の方法が追加され、優れた生化学的管理の利点が示されました。これは、外部ビーム照射療法に近接照射療法が追加されました。 追跡期間は短いが、この試験が成熟するにつれて、遠隔転移および全生存期間に匹敵する利益が見られる可能性が高い。"early declines in quality of life" に対応して岡本氏の引用した文が続いている。前のブログと重複になるが、再度引用する。
アジュバント放射線療法またはADTの使用が徐々に副作用を増加させ、生活の質が早期に低下するように、補助的近接照射療法も副作用の漸増を示している。
However, brachytherapy is highly operator dependent, and excellent quality of life outcomes have been demonstrated from high-quality implants using modern imaging and treatment planning techniques.Google翻訳
しかしながら、近接照射療法は、操作者依存性が高く、最新のイメージングおよび治療計画技術を用いて、高品質のインプラントから優れたQOL結果が実証されている。岡本訳
前立腺癌の密封小線源療法は極めて高度に術者の技術に依存しており、これまで好成績は正確な計画とテクニックに基づく高品質の小線源治療によって達成されてきたことに注意すべきである。併用の結果QOLの低下のことをいった後、術者及び最新の技術で優れたQOL結果となったことが実証されているという文の流れである。決して好成績が正確な計画とテクニックに基づく高品質の小線源治療によってもたらされたという文ではない。
なぜこのような全く間違っているとはいえないが恣意的な訳をしたのだろうか。41分40秒付近で「再発を起こさないよう必要かつ十分な治療を毎回毎回同じ精度でできるように精度管理をしているだけです」といい、その後、「厳しいルーチンチェックに基づいてこういう高い治療成績をだす」といっている。
上記の論文の引用はこの言葉の後に続くので"excellent quality of life outcomes"は「優れたQOL結果」ではなく「好成績」とまったく違って訳す必要があったのだ。副作用の話をしていたら、「優れたQOL結果」で問題ないが、この講演の文脈ではそうするとワケが分からなくなるので超訳をしたものと思われる。
昔別宮貞徳の誤訳に関する本を面白く読んだことがある。英文の理解不足からの数多の誤訳が生まれていることを示したいくつかの著作だった。
今回の岡本氏の超訳は正確な訳をすると講演の流れを損なう結果となるからの行為だろう。
原本にインスパイアされた文というのだろうか。
文学作品ではないのだ。医学論文をこのように扱うのは誠実さに欠けると思う。
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