治療法の選択 高リスクの場合

掲示板に治療法の選択に関してと題して武内氏の投稿が2017年5月14日にあった。いつもの論ではあるが、PCRSGの説明の日本語訳を冒頭に書いてのものだったので、その出処を明確にして反応の投稿をRe:治療法の選択に関してと題して行った。

その投稿内容を整理し、私もPCRSGのデータを枕にさらに掲示した比較図の画像に少し情報を足したものをブログで掲載することとし、以下に書いていく。

PCTRFについてはブログで以下の2件の記事を書いている。
PCTRFと滋賀医科大の治療成績
PCTRFと前立腺がんに立向い

日本メジフィジックス株式会社(線源会社)の前立腺がんの小線源療法よりリンクされているページ、前立腺癌と診断されて治療方法の選択に悩まれている患者様へで「患者・医師・医療関係者が、前立腺癌の異なる治療法について治療成績の比較ができる、データが必要」ということでPCTRFのデータの日本語訳をリンクしている。次のように書いている。
主治医の先生との面談の際に有用ですので印刷してご使用ください。
これは主に海外の病院の論文からのデータによる治療成績の比較である。高リスクの患者の場合はこのデータのように小線源の治療がよくて、日本でも小線源を選び、治療を受けたほうがいいという結論に果たしてなるのかどうかみてみる。

比較の対象

外照射と小線源の比較を行うため、治療法比較3より以下の9つの病院の論文、または学会発表の資料のデータを選んだ。いずれもネットで無料でfull text が確認できるものまたは医学誌の該当部分をコピーして全文が確認できたものである。
・外照射 東北大学、千葉県がんセンター、北海道大学、東京大学
・小線源 滋賀医科大学、昭和大学、東京医療センター、徳島大学、奈良県立医科大学

小線源は高リスク前立腺がんで、トリモダリティーを積極的に実施している施設 前立腺がんの小線源療法 日本メジフィジックス株式会社でページが作成されたときに最初に掲載された病院3つとさらに追記された徳島大学及び掲載はされていないが、日本で最初に小線源治療を行った東京医療センター 1) である。

なお、治療法比較3の27 愛知県がんセンターの富田夏夫氏の論文ではIMRTで5年PSA非再発率、高リスク  97.7% 、超高リスク 87.9% と良好な成績で報告され、PCTRFと滋賀医科大の治療成績で書いたようにPCTRF にデータが入っている。ただし、full text は有料なので、今回の表の対象外とした。

比較表

治療法比較3をベースに作成した。特に高リスクの場合NCCNリスク分類のリスク因子毎にどの程度の割合を占めているのか興味があったので調べ、%表示した。最初リスク因子の一つのPSAが20を超える患者の数は必ずしもすべての資料に載っていなかったので除いたものを作成したが、書いていないものはそのまま空白にし、さらにPSA非再発率も表に追加した。サイトには高リスク患者特性その2でアップした。この記事の最後に画像で示す。
外照射、小線源で各々、T3以上の患者の割合の多い順に並べた。

表の記載方法など

1. 年間治療数は単純に患者数/期間の値((終了年ー開始年)+1)を記載したものであり、月は考慮していないので、若干実際の値より少なくなる。また、高リスクと超高リスクとを分けて報告しているものに関してはそれを足した数と割合を示した。
2. リスク因子の患者の数、割合は以下のように記す。
病期がT3以上:T3 n(%)
GSが8以上:GS n(%)
PSAが20を超える:PSA n(%)
ただし、論文によっては20以上の場合の数を書いている場合があるがその場合もその数値を記す。
3. 9 奈良県立医科大学のはリスク分類はD'Amicoである。

表をみて

表を一見すると小線源のほうがPSA非再発率の値がいいことが分かる。ただ、これは5 滋賀医科大学を例外としてT3以上の患者の割合が少ないことが大いに関係していると思う。すなわち、病期の進んだ患者は小線源で治療していない(あるいは治療患者数が少ない)ということで、PSA非再発率が高いということに結果としてなったという推定である。

もっとも奈良県立医大はリスク分類はD'Amico であり、少なくとも論文の対象の期間はT3の患者は受け入れてなかったということなので同じように扱うのはよくないのかもしれない。

以前にも書いたが高リスクでT3以上の患者を無条件に受け入れているかと思われるのは滋賀医科大だけであり、その他は高リスク患者の内占める割合をみる限り、何らかの条件があると思われる。
高リスク前立腺がんで、トリモダリティーを積極的に実施している施設 前立腺がんの小線源療法のページに載せられていても制約があるということはどこの地域でも受けられる療法でないということだ。
これに比べて外照射(IMRT)は病期で制限されるという話はきいたことはなく、論文でのデータでもそうなっている。IMRTで治療可の病院は各県に少なくとも一つはあり、そういった面では地域に限定した治療ではない。

どこの地域でも受けられることができない小線源と外照射、ホルモン治療の併用した治療(トリモダリティ)を受けたいと思った患者はネットでの口コミに頼らざるをえず、掲示板が賑わうわけだ。
べるぼさんは2017年4月29日の投稿で書かれた「小線源同窓会」という雰囲気に掲示板がなるのはある意味仕方ないところかと思う。
掲示板管理者の個別相談も多分、有益な情報源なのだろう。

もちろん、この表でのT3以上の患者も受け入れ、PSA非再発率もいい滋賀医科大は例外であり、掲示板でS医科大のO先生という単語が溢れているのは宜なるかなと納得する。

小線源治療を希望し、「自宅からの距離はあまり考えず、遠くても、いい病院で治療を受けたい」ということならば滋賀医科大 2) 一択となるのでしょう。

1) 小線源療法(国立病院機構東京医療センター斉藤史郎先生)に以下のように書かれている。
2003年に私の勤務する施設(国立病院機構東京医療センター)で初めてヨウ素125を使った小線源療法が実施されました。
2) 滋賀医科大 前立腺癌小線源治療学講座は日本メジフィジックス株式会社の寄付講座である。詳細は滋賀医科大学の寄付講座を参照のこと。
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