東北大の小線源治療は高リスクは対象外である。当然、高リスク限局性前立腺癌を有する患者を対象とするランダム化比較試験TRIP試験には参加していない。TRIP試験登録病院に書いたとおりだ。というわけで、TRIP試験の責任研究者として名前があげられている並木幹夫氏が所属していた(当時)金沢大学附属病院泌尿器科を訪問する。当科で行っている治療より前立腺癌に対するロボット手術をみてみる。以下のように書かれている。
日本では、平成24年(2012年)よりロボット支援前立腺全摘術が保険適応となったことで急速に広まっており、平成28年4月時点で、全国200施設以上で施行されています。当施設では、厚労省から認可を受けた高度医療により、他施設に先駆けて平成21年(2009年)3月より本手術を開始し、平成28年4月現在で260例以上に施行しています。これは手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖|東京医科大学病院に書かれている東京医科大は2006年に国内で初めて開始し、国内トップの手術実績(1400件以上)には到底敵わないが、それなりの実績である。
前立腺癌 - 金沢大学附属病院泌尿器科のページを確認する。
限局性前立腺癌のリスク分類が掲載されていて、多分、NCCN分類に準じたものと思われるが、高リスクの定義が間違っている。PSA 「20以上」 と書かれている。中リスクが「10~20」と書かれているので、「20を超える」が正しい。実際、前立腺癌の治療方針(PDF)にはそう書かれている。
論文ではなくサイトの情報ではあるが、このように定義はよく間違えるものだろうか。
といったことはさておき、注目すべきは「金沢大学附属病院での前立腺癌に対する治療方針」の表である。リスク分類と病院での可能な治療とが丸、三角、バツで明確になっている。
高リスクに関しては小線源永久留置 ブラキーセラピー及び高線量率ブラキーセラピー(HDR)はIMRTと併用で対応可であるが、超高リスクはHDRのみである。もちろん、IMRTは超高リスクも対応可ではある。
さらに、転移性前立腺癌でもIMRTは三角と表示されている。さきのPDFファイルには以下のように書かれている。
転移性前立腺癌(ステージD)ではホルモン療法が治療の中心となります。ホルモン療法以外にも、骨盤部リンパ節転移のみの場合、骨盤部に広範囲に放射線療法(外照射)を行うことがあります。さらに次のように書かれている。
高リスク、超高リスクの前立腺がんの場合は、ホルモン療法と他の治療法(放射線療法)を併用して施行し(集学的治療法)、治療成績を向上させることができます。文責は2016年8月1日より教授である溝上敦氏だ。ごあいさつに書かれている以下の文と対応する。
このため、患者さんの年齢、病状、合併症、希望などを総合的に考えた上で、治療方針を決定いたします。
忘れてならないのは、患者への「思いやりの心」です。機械的な作業だけでは患者は治りません。精神的にも患者を支えていくことが重要です。当たり前のことのようですが、医者を長い間続けて、コンピュータ化された医療の世界にいると、その気持ちがなくなってしまいがちです。私は、「思いやりの心」を常に持った上で、診療・研究が両立できる泌尿器科医を育てていき、地域医療に貢献して、世界にも展開していきたいと思います。治療法決定において金沢大学の患者と医師はどのような会話がなされているか興味があるところではある。選択肢が豊富なのは間違いない中でどのように選ぶかというのは単に患者の希望(もちろん第一かと思うが)のみではなく、総合的というのが肝だろう。
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