それに対して、たつきさんは2017年1月16日の投稿で返信してくれた。
掲示板投稿時に日本泌尿器科学会/編『前立腺癌 診療ガイドライン 2016年版』メディカルレビュー社の検診の項のCQ1(P.42)の記載は省略した。特に意味はなかったが、論旨には直接関係ないかと思い、省略しただけだ。
掲示板投稿時、「以下少し違った点からの記述」ということで、有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン 本文に記載された泌尿器科委員の辞任に関することを少し長めに引用した。
それをふまえ、今回、もう少し、「診療ガイドライン 2016年版」を読むと、CQ4(P.51)に興味深い文が書かれているので紹介する。
CQ4 前立腺がん検診の主な利益と不利益は?
前立腺がん検診を受信することの主な利益は、進行性、転移性癌への進展抑制と前立腺癌の死亡率が低下することである。また早期に発見することにより、個々の症例において多くの治療法から適正な選択が可能になることである。この文章だけでは検診を受ける利益が不利益に勝るので、検診を推奨グレードB として受けたほうがいいということで推奨しているかどうかは不明である。背景・目的には次のように書かれている。
一方、不利益は受診では発見されない癌があること、不必要な前立腺生検の増加、前立腺生検に伴う合併症、過剰診断、過剰治療のリスクの増加、治療に伴う合併症によるQOLの低下が挙げられる。 推奨グレードB
前立腺がん検診の利益・不利益については近年、大規模なRCTの累積したデータより多くの検討がなされ、以前よりも明確になりつつある。ここでは、信頼できる大規模RCTからの報告を主に参考にしながら前立腺がんの検診の利益、不利益について解説する。ということで、全文引用しないとその全容は分からないということになるが、それはあまり意味のあることではない。全体のトーンは不利益より利益があるということのようだが、このCQ4の書き方が素人目からみると少し変である。解説で関心ひかれたことを引用する。P.52に次のように書かれている。
敗血症等で死亡に至る合併症は極めて稀であり、ESPRCの検討では10,474例の生検で死亡例はなく、本邦の検討でもわずか1/212,065例(0.0005%)である1)。この参照されている論文は私が生検の合併症の比率で示した論文である。確かにfull textを読むと、一人死亡が確認できる。本邦で敗血症による死亡2人というのはcase study として報告されたのが2人ということだろう。
解説の最後に以下のように書かれている。
検診の利益と不利益をまとめた本邦の厚生労働省研究班(濱島班)のガイドライン 2) における、過剰診断の不利益に関する記述は参考になる。しかし利益や不利益の多くの部分において、最新の重要な研究成果に関する考察がなされていない。そのため、現時点では、『前立腺がん検診ガイドライン2010年増補版』に準拠した一版向けのPSA検診の最新情報・利益と不利益を解説した啓発資料(『PSA検診受診の手引き』(公益財団法人前立腺研究財団発行)等)を用いた情報提供を行うことが望ましいが、全般的に前立腺がん検診の不利益に関する要因は近年その多くが改善傾向にある。
1) Int J Urol. 2008 Apr;15(4):319-21.
2) Jpn J Clin Oncol. 2009 Jun;39(6):339-51.、full text
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