厚労省のPSA検査は無意味との発表も気になります少し、調べ、一等新しい資料としてがん検診の考え方(厚生科学審議会 健康診査等専門委員会 第2回 2016/2/19 資料)をみいだした。確かに厚生労働省の推進するがん検診は胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がんであり、前立腺がんは含まれていない。
厚労省研究班におけるがん検診有効性評価ガイドラインのまとめの表でのPSA検査はI:証拠不十分であり、対策型検診は「推奨しない」であり、任意型検診(自己負担の人間ドック)に関しては「個人の判断に基づく受診は妨げない」ということになっている。
がん検診のもたらす不利益として「寿命に比べて臨床的に意味のないがんの診断治療(広義の過剰診断)」があげられている。
「がん検診の考え方」の最後にUS Preventive Task Forceの推奨グレードの表が掲載されていて、前立腺がんは「D:不利益が利益を上回る」となっている。
中であげられている有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン(2008年)はがん検診ガイドライン 前立腺がんよりリンクされている。
P.23 の推奨グレードには以下のように書かれている。
最終的に、前立腺がん検診の方法として検討した前立腺特異抗原(PSA)及び直腸診はいずれも推奨Iと判定した。P.26には泌尿器科委員5人がガイドライン公表直前に辞任した 1) と書かれている。推奨グレードIとすることは泌尿器科委員の同意を得たものではないということだ。
直腸診の推奨については、基本的表現とほぼ一致する表現を採択したが、前立腺特異抗原(PSA)の推奨の表現は、文献レビュー委員会に参加協力した泌尿器科医の委員のコンセンサスが得られたものではないことを付記することとした。
がん検診ガイドライン 前立腺がんには以下のように書かれている。
・2009年3月26日のThe New England Journal of Medicineに米国とヨーロッパで行われている2つの無作為化比較対照試験の結果が公表されました。すなわち、この2008年版には米国のPLCO研究、欧州のERSPC研究の結果は反映されていなくて、反映した改訂版はでていないということだ。
・2009年3月26日から、この2つの研究結果をもとに前立腺がん検診ガイドラインにおけるPSA検診の再検討を開始しました。
いずれにしろ、「PSA検査は無意味」とまでは厚労省はいっていないのは事実である。
日本泌尿器科学会と見解は異なるということだろう。前立腺癌診療ガイドライン 2012年版では次のように書かれている。
前立腺がん検診により前立腺癌の転移癌罹患率・死亡率は低下するのか?
信頼性の高い無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で,PSA検査を基盤とした前立腺がん検診の実施により,進行癌や転移癌の罹患率が低下し,前立腺癌死亡率が低下することが証明された。 推奨グレード B2016年版も同様の文である。P.42
前立腺がん検診により前立腺癌の転移性癌罹患率・死亡率は低下するか?
信頼性の高いRCTと実践的な前向き検証研究で,PSA検査を基盤とした前立腺がん検診の実施により,進行性癌や転移性癌の罹患率が低下し,前立腺癌死亡率が低下することが証明された。 推奨グレード B
推奨グレード B 科学的根拠があり、行うよう勧められる。なお、PLCO研究に関しては群馬大学の伊藤一人氏の『前立腺がんPSA検診:誤解と真実1』で以下のように書いている。
米国の研究は、実は、検診を受けない群に無作為に振り分けられた人(コンロトール群)が、実際には検診を受けてしまった割合(コンタミネーション)がかなり大きく、残念ながら無作為化比較研究としては、科学的な分析が困難な研究です。伊藤氏の書いている日本泌尿器科学会のPSA検査に関する見解は以下のページである。
・ PSA検査を用いた前立腺がん検診に関する見解
さらに、上記の米国予防医学作業部会(US Preventive Services Task Force:USPSTF)の勧告に対する日本泌尿器科学会の見解のページは以下のとおり。
・ 米国PSTFの勧告に対する見解
また、「住民検診の項目としては勧められない」が、「任意に受けることは否定しない」という少し分かりにくい結論に関して木村医師は前立腺がん集団検診でPSA検査は勧められぬという文を書いている。以下の言葉に納得する。
集団全体の死亡率を下げることを目的としている対策型検診と、個人の死亡リスクを下げることを目的としている任意型検診とは別物です。1) 研究班構成をみると、平成19年10月5日に辞任した研究協力者の4人の内二人は私の知っている東京厚生年金病院(当時)の赤倉功一郎氏、栃木県立がんセンターの川島清隆氏である。さらに平成19年10月31日に分担研究者である群馬大の伊藤一人氏が辞任している。
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この記事へのコメント
Gettingbetters
果たして無治療のまま60代を迎えることができたのかはわかりませんが。変化を知るという意味では、有用な検査と思います。。。
石葉
直る見込みのある段階でみつかるのは絶対にいいですから。