ひげの父さんこと武内務氏(以下T氏と書く)はいままでサイト公開について書かれている。
1. 【前立腺がん】先輩患者からのアドバイス 医師まかせにしないで“選択力”を身につけて:がんナビ
2. 前立腺がんの治療情報は患者に届いているか
3.【まとめて読む】治療の選択、医師任せにしない:朝日新聞デジタル
1. は 2008/4/30 の日付が記載されていて、「まとめ:小板橋 律子」と書かれているのでT氏の話した内容をまとめたものである。
2. は前立腺がん : MEMOの1ページであり、2013年7月20日の日付の記載があり、最初に「以下は、ひょうごがん患者連絡会のニューズレター30号(2013年7月発行)への寄稿文です」という注が書かれている。T氏の執筆である。
3. はアピタル(医療・健康・介護):朝日新聞デジタルの1ページであり、「石倉徹也 2016年8月28日」という記載がある。
1.には次のように書かれている。
日本語のサイトとして、きちんとした前立腺がんの情報サイトが無かったので、自分でウェブサイト、ひげの父さんの <前立腺がん治療ガイドブック>「もしもあなたが“前立腺がん”を告げられたら・・・」 を立ち上げてしまいました。私のサイトの元データは、米国のNCCNから持ってきました。英文は自動翻訳ソフトを使いながら、パズル感覚で読み解きました。主治医の先生も見てくれて、「泌尿器科の先生にもみせたい」と言ってもらったこともあります。2. には次のように書かれていて、Googleで"前立腺がん 治療法"で検索すればTOPページに表示されるとの言である。
前立腺がんと告げられた時、本当に欲しいと思う情報がすぐに見つかるサイトを作りたい・・・そう思いつつ躊躇する日々が続いたのですが、ともかく思いきってやってみないことには始まりません。3. には以下のように書かれている。
前立腺がんの先進国、米国のサイトを参考にしながら形を整え、新たに掲示板を開設し、がん情報にアンテナを張り、加筆修正を加え、患者さんの相談にも乗りながら、徐々に体裁を整えて行ったのです。
患者(素人)の立ち上げたサイトではありますが、昨年は、複数の専門医のチェックも受け、「腺友ネット」という前立腺がん支援サイトに装いを改めました。 http://pros-can.net/
治療法の解説ページもつくった。少しでも理解しやすいようにと、がんを暴走する車に例えてみた。血液中の前立腺特異抗原(PSA)は排気量、がんの進行度は走行距離、悪性度はドライバーに見立て、正しい道(治癒)に戻るため、まずは病態を知ることが大切と訴えた。内容は主治医の溝脇尚志さん(52)ら専門医にチェックしてもらった。
情報量が増えてきたため、12年に専用サイト「腺友(せんゆう)ネット」(http://pros-can.net/別ウインドウで開きます)を開設した。解説ページを「前立腺がんガイドブック」と名付けた。アクセス数が増加し、患者同士で相談し合う掲示板には「みなさんがいるから厳しい状況でも希望を持てています」といったコメントが並んだ。以上、長々と引用したが、書かれている内容はそう変わるものではない。「前立腺がんガイドブック」について 断端陽性の版数毎の記述に書いたように大きく版数は以下の2つである。
面談を求める患者もいて、これまで200人以上に会った。
・第1版 2005年
・第2版 2012年
NCCNガイドラインのNCCNガイドライン日本語版 アーカイブをみると日本語の一等古いのは2010年である。もちろんそれ以前にも翻訳されていてアーカイブされてないかもしれないが、2005年当時は翻訳はないと思われる。その時点で「翻訳ソフトを使いながらパズル感覚で読み解き」、一患者が米国の情報を翻訳公開することは多分意味のあることではあっただろう。しかし、現在では必要ならば日本語訳をみればいいだけである。
ガイドブックの作成の意図は前立腺がん治療ガイドブック:もしもあなたが”前立腺がん”を告げられたら:前立腺がん・前立腺癌・治療法・解説に書いているように「エビデンスのある新しい情報のみをコンパクトに集めた、”前立腺がん患者の為の道しるべ”」をつくることにあったようだ。
NCCNガイドライン以外に参考にした情報はいくつかあるようだが、どのように参考にしたかは不明であり、それらを元にT氏の個人的な見解が述べられる。その最たるものが<前立腺がん《治療法早見表》である。以下のように書かれている。
*早見表作成に利用した参考資料(優先順)各々の資料の中では論理的な整合性があるものが一患者であるT氏がどのような観点でまとめたのかは全く不明であり、医師でもないのにそのようなことが可能なのか疑問である。
NCCN:前立腺癌治療ガイドライン(2012)
NCI:前立腺がんPDQ標準治療(翻訳)
がん情報センター:前立腺がん解説
なお、上記参考資料はリンクされているが正確ではない。
NCCNガイドラインは最新版へのリンクであり(現在は 2014年 第2版)である。2012年版は以下のとおり。
・2012年 第3版
さらにがん情報センターはリンク切れである。現在は以下のとおりである。
・前立腺がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
図4 前立腺がんのリスク分類と治療
かつて、掲示板への投稿1周年で私はこう書いた。
「前立腺がん治療ガイドブック」を再度よくみると、参考資料ということでいくつかあげられているが、文章レベル、考え方でNCCNガイドライン、がん情報センターのどこを参照したのか、まったく分からない。いわば、学生が勉強した成果を引用なしで、どこからとったかも明示せず、文章を切り貼りしたもの、コピペレポート、コピペ論文と変わるところはない。普通の科学者(医者含む)ならば、ガイドラインにしろ、論文にしろ、自分の論を補足するもの反例となるものすべて、原典を参照としてあげる。また、医者であれば、講演でも、Webの記事でも誰でも原本にたどれるようにキチンと参照として元の論文を明示する。「前立腺がん治療ガイドブック」はこういった医療情報ではなく、患者の勉強ノートといったものである。更にコピペの文と私見が混じり、どこからがT氏の個人的な意見とかが分らない文となっている。この見方は今も変わらないが、何よりも問題なのは第2版に至る際の変異である。一患者の情報収集によるサイトであることは変わりないが、あたかも権威あるものであるかのような意匠を装ってきた。
それは「前立腺がんガイドブック」について 公式と誤認させるもので書いたとおりである。多分に2012年に腺友ネット 前立腺がん情報発信サイトを公開し、その中の一コンテンツとしてのガイドブックという位置づけということからだろう。名前も次のように変わっている。
<前立腺がん治療ガイドブック> もしもあなたが”前立腺がん”を告げられたら
→ 前立腺がんガイドブック
前立腺がん患者ががん告知を受けたときに参考にする情報ということを陽にいっているものから一般的な「前立腺がん」のガイドブックと誤認させる(一患者の書いた私見がたくさんあるにもかかわらず)ものへと変遷している。
患者の個人サイトであり、よく勉強し、大胆に意見を書いているなあということでみるのが正しい見方であろう。
そうして、当ブログで縷々書いてきたように「前立腺がんガイドブック」の誤りを修正してもらうことは中々大変であり、間違いを指摘しても意図的に誤りがそのままの状態ということもある。
あくまでもT氏の個人サイトであり、内容に関してもとくに医学的な真実といったものにはあまり関心はないと思われる。
今回、朝日新聞デジタルによると、最初のサイトをみた医師の一人は京都大学の溝脇尚志氏であることが分かった。
-------以下20160/10/19に追記
藤野邦夫『ガンを恐れず ガン難民にならない患者学』の著者紹介には次のように書かれている。
この5年間だけで1000人以上に医師や治療法を無償で紹介してきた。2016年8月28日の記事で期間は定かではないが、「面談を求める患者もいて、これまで200人以上に会った」ということなので、「がん難民コーディネーター」の藤野氏がT氏より圧倒的にたくさんの数の患者に対応したといえる。
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