で以下の3つのサイトをお勧めとして紹介した。
1. 前立腺がん 基礎知識:[がん情報サービス]
2. 前立腺癌診療ガイドライン 2012年版
3.NCCNガイドライン 日本語版|前立腺がん
その記述例として手術後のPSA再発に関しての1.と2.を示した。3.は「米国において前立腺がんに対してのガイドラインはどうなっているかの参考程度であり、書かれていることがそのまま日本で治療可とはいえない」と書いた。せっかく、例示したので、3.の場合はどうなっているかみてみる。1.はガイドラインではないので、2.と3.を比較する。
まず、1.のCQ9 前立腺全摘除術後のPSA再発症例には,どのような救済療法が勧められるか?には以下のように書かれている。
【推奨グレード C1】 前立腺全摘除術後のPSA再発症例には,救済放射線療法または救済ホルモン療法が推奨される。
(推奨グレード C1) 救済放射線療法を行う場合は,PSA値0.5 ng/mL 未満の段階で治療を開始するのが望ましい。
(推奨グレード C1) PSA倍加時間10カ月以内またはGleasonスコア8~10の再発症例に対しては,救済ホルモン療法が推奨される。
解説
救済ホルモン療法(salvage hormone therapy;SHT)はPSA倍加時間10カ月以内,Gleasonスコア8-10 といったSRT(salvage radiation therapy) の有効性が期待しにくい場合 5)にオプションとなる。
NCCNガイドライン 2014年 第2版のPROS-7には次のように書かれている。
根治的前立腺摘除術での生化学的再発遠隔転移陰性の場合はホルモン治療(ADT)の有無は別として救済放射線療法が無条件に推奨されている。もちろん、遠隔転移陽性の場合は「ADT ± 転移部位(荷重骨の場合)または症状のある部位へのRT」である。
遠隔転移陰性 RT ± ADT
PROS-D(2 of 2)には以下のように書かれている。
放射線療法の原則日本とだいぶ違う。播種性転移の所見は認められない場合には、全例放射線治療が推奨され、PSADTも期間も日本と異なり、それも有益な条件としての提示である。
前立腺摘除後の放射線療法
・望ましくない病理学的特徴を認めるかPSA値が検出限界以上であるが、播種性転移の所見は認められない場合には、全例に対するアジュバント/救済治療としてのRTの施行がエビデンスにより支持されている。
・アジュバント療法としてのRTの適応には、pT3、断端陽性、グリソンスコア8~10、精嚢浸潤などがある。アジュバント療法としてのRTは、手術の副作用が改善/安定してから通常はRP施行後1年以内に施行される。断端陽性かつPSADTが9ヵ月以上の患者で最も有益となりやすい。
・救済治療としてのRTの適応には、検出限界未満であったのがその後の測定で検出限界以上となり、2回の上昇がみられる場合などがある。治療前のPSA値が1ng/mL未満でPSADTが遅い場合に最も有効となる。
考察のページであるMSでページ数を表記したところをみてみる。
日本の参考文献 5)はNCCNガイドラインではMS-3に次のように書かれている。
根治的前立腺摘除術が不成功に終わった場合に補助または救済放射線療法(RT)が成功する可能性についても、ノモグラムを用いて評価することができる 11),23)。この23)が日本の5)である。確かに表題が"Predicting the outcome of salvage radiation therapy for recurrent prostate cancer after radical prostatectomy."となっていてabstractにも予測のノモグラムを開発しましたと書かれている。
さらにfull textのFig 2.をみると条件によりどの程度のパーセンテージなのか一目でわかる。
MS-25には次のように書かれている。
ノモグラム11),23)が治療効果の予測に有用である可能性があるが、妥当性の検証はなされていない。上記の推奨に対応する考察の詳細は煩わしくなるので省略するが、MS-24〜MS-25に書かれている次の記述は意味深いと思う。
臨床的および病理学的な基準を用いて個々の症例を局所再発の可能性が高い患者と全身転移の可能性が高い患者とに振り分けること、ひいては術後照射への反応性を予測することは、不可能であることが証明されている 254) 。個々の論文の詳細な検討をするつもりはないが、この比較でみると、NCCNガイドラインの基準のほうが妥当性があるかなと思う。
ただ、たとえば、手術後、再発してしまい、PSA倍加時間10カ月以内であって主治医から次のようにいわれたとする。
「転移の可能性が高いのでホルモン治療にしましょう」その対応を陽に書くことは仮定としても今は難しい。
1. の参考文献
5) J Clin Oncol. 2007; 25: 2035-41.
2. の参考文献
254) JAMA. 2008 Jun 18;299(23):2760-9.
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