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前立腺癌外照射治療の晩期有害事象に対して施行した高気圧酸素療法の有用性の検討
武田隼人 Hayato Takeda (日本医科大学)
たしか、与謝野馨『全身がん政治家』に高気圧酸素療法について書いていたと思い、再度借り出した。
放射線治療後の後遺症で血尿がひどくなり、膀胱洗浄を繰り返していたのが、東京医科歯科大で高気圧酸素治療を行って顕著な治療効果がったということだ。かかった費用も20回通院して2万円とのことだった。
以下のように書かれている。
P.182〜183
高気圧酸素治療というのは、潜水艦のような大きな機械の中に入って、椅子に越し掛け、先生の指示に従って酸素マスクをつけたら、その中で二時間、酸素を吸って座っているだけでいい治療法です。密閉された室内の気圧が、ゆっくりと二気圧まで上がっていくので、鍵や携帯電話などの金属類は中に持ち込めません。本なら構わないということだったので、私は哲学や政治に関する本を読みながから、二時間を過ごしました。
P.184〜185治療を受けた東京医科歯科大学の柳下和慶医師の話
高気圧酸素療法は、昔からある治療法だそうですが、放射線障害にこれほど効果があるということは、一般的にほとんど知られていません。
・東京医科歯科大学高気圧治療部
P.186〜187
放射線治療はがん細胞に対して有効ですが、ある一定量の放射線をかけますと、どうしても放射線障害という後遺症が出てきます。放射線が当たった細胞の中でDNAの問題が起きているといわれているので、放射線をかけた直後ではなく一年後とか一年半後、もしくはそれ以上の時間が経ってから少しずつ障害が現れるのです。
細胞組織にどんな影響が出てくるかというと、まず毛細血管が少なくなって血流量が大幅に減るため、「線維化」という組織が硬くなる症状が起きてきます。血液は酸素と栄養を運んでいますから、血流が減ると、細胞組織に大きなダメージを与えます。みずみずしい細胞の形ではなく、硬くボロボロした状態になるのが繊維化です。粘膜ではとくにこのような反応が出てきます。与謝野さんの場合は、直腸と膀胱が痛んでいました。
高気圧酸素療法とは、簡単に言うと、傷んだ細胞に足りなくなった酸素を供給できるシステムです。
P.189トピックス - 東京医科歯科大学高気圧治療部には以下のように書かれています。
高気圧酸素治療は、仕組みとしては非常にシンプルなものです。狭いカプセルをイメージされる方が多いのですが、当院のものは同時に十六名が入れます。日本最大級の施設です。複数の患者さんが同時に入れる装置は、全国で四十九施設ぐらい。都内では、五〜八人用が、日本医科大学、荏原病院、東芝病院にある程度です。
昨今、疲労回復やコンディショニングを謳って、1.3気圧程度までの空気加圧での、いわゆる「加圧カプセル」が多く見られています。酸素カプセルではなく、2絶対気圧まで加圧し、100%酸素を吸入する高気圧酸素治療装置もあります。世界的に認められているもので、酸素カプセルと混同してはいけません。日本高気圧環境・潜水医学会でも、保険適応にもなっている治療法、治療装置で、日本では約700-800の病院にあります。一人用の写真が載っているが、通常やはりこの写真のようなイメージをもつ。
新聞報道でもありますように、スポーツ選手に対する加圧カプセルの使用が問題視されていますが、しかしながら当院で行っている高気圧酸素治療は、いわゆる「加圧カプセル」とは大きく異なるものであります。
放射線治療後の後遺症の対処に関して、日本放射線腫瘍学会 小線源治療部会 第12回研究会 尿道・直腸合併症の克服 2010.5.16に詳しく書かれている。
京都大学の溝脇尚志氏は晩期直腸出血に対する治療選択肢について次のように書いている。
晩期直腸出血に対する治療の選択肢ですが、Grade 1の状態では、経過観察や痔で使用する座薬や軟膏の処方で充分に対応ができます。しかし、Grade 2から3の状態では、ステロイド液の注腸もしくはスクラルファート液の注腸、高圧酸素療法を行います。また、止血が困難な場合には、内視鏡下でアルゴンプラズマ凝固装置(以下、APC)による焼灼を行います。更に晩期尿路障害は以下のように書かれている。
晩期尿路障害では、治療選択肢は少なく、何もせずに経過観察を行うか、止血剤を投与します。また、高圧酸素療法は非常によく効くので、膀胱出血には非常にいいと思います。これらの方法で出血が治まらない状態であれば、内視鏡下での焼灼が必要になる場合があります。晩期尿路障害に関しては高圧酸素療法は非常によく効くということのようだ。与謝野さんの本に柳下氏がはじめに「膀胱出血している人はこの治療を受けて八十二%が治っています」と説明されたと書かれている。
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