この章の書き方としては各治療法の説明をし(除くHDR、HDRは高リスクで説明)、その治療法に関して論評し、リスク群の表で治療の目安にあげられた複数の中でブラキが一等お勧めという流れである。
一貫してブラキ以外の治療法を謗る(私からみると)としか思えない書きぶりである。それは、その1で書いたように「まえがき」からそうである。手術に関して、再発率等いろいろ数値をあげているが、その原本を辿るのは容易でないので、外照射、IMRTに限って気づいたことを書く。
まずは前立腺が動くことに対しての外照射の不利であるという論である。本件は既にその2 - 前立腺が動くから外照射は不正確?で書いた。そこで、書いたように3か所はこの章でいっている。執拗なことだ。それによって外照射の照射が不正確であるという印象をもたせばいいということだろう。
P.147には次のように書かれている。
IMRTで治療を受けた前立腺ガンの患者のなかに、再発例が少なくないことが問題になってきた。この現象には、ふたつの原因があったと思われる。ひとつは照射技術の問題であり、もうひとつは線量不足という本質的な問題だろう。ここで問題とするのは著者の憶測を連ねる文を書き、それも繰り返し書き、それがあたかも事実だと思わせることである。「IMRT治療で再発例が少なくないという問題になってきた」ということは伝聞であり、何ら意味のあることではない。そういったエビデンスは少なくともないし、次のP.148に書かれているようなNHK・TVニュースといったマスコミ報道ですらない。ためにするIMRT治療を謗る文言である。
そもそもIMRTにはコンピュータを駆使した最先端の技術が使われているだけに、使いこなすのはかんたんな仕事ではなかったのだ。しかも日本のガン医療には、いまなお放射線治療医が少なく、医学物理士にいたってはわずかしかいないという問題がある。
更にいうならば、P.148に記されている「前立腺ガンの治療には放射線の線量が十分でない」というのはIMRT治療の線量が少ないということをいっているわけではない。IMRTも含まれているかもしれないが、後述する2009年のIMRTをもつ病院の数40からいうと主に3D-CRTに関するものであろう。P.149に書かれている大阪大学の調査もIMRTだけに絞っての調査ではない。
このように最初に憶測の文を書き、後にIMRTも含まれるかもしれないが、問題のあることを2回いうと、あたかも「IMRTで治療を受けた前立腺ガンの患者のなかに、再発例が少なくないことが問題」ということが事実であるようにみえる。
再発例が少なくないことの原因をふたつあげ、「思われる」、「だろう」ということで、問題が正しいとして、どこからその答えを導いたのだろうか。文芸作品である。
もちろん、その問題自体が存在しないから、答えも架空だろう。
次のフレーズ、「放射線治療医が少ない」ということに関しては放射線治療専門医の資格を持っている医師は放射線治療専門医一覧のページの東京都、千葉県の数を数えると東京都は138名、千葉県は51名の計189名いる。(とても全国を数える気はしないが)
この数値が多いか少ないか私には分からないが、少なくとも放射線治療科には放射線治療専門医でなくても放射線治療医がいるはずである。
なお、2016年3月12日のEテレの「TVシンポジウム」で近畿大学の西村恭昌氏は「放射線治療の専門医は現在1070名いて毎年50名ほどふえている」といっている。 (3月18日追記)
「医学物理士にいたってはわずかしかいない」ということであるが、日本放射線腫瘍学会のNewsletter 抜粋記事よりリンクされている病院における医学物理士のポストについて(No.108)によると「現在わが国における医学物理士数は700 名である」と書かれている。人数ではなく、以下のようなことが問題であると上記の資料には書かれている。
病院における「医学物理士」としての雇用形態はまだ少なく、一部では「診療放射線技師の免許を有すること」という、国際的に考えれば不条理な条件付けがなされたりしています。そのため、医学物理士の資格を持つ診療放射線技師が両者の業務を行い、過重労働になっている事例も見受けられるようです。資格を持っている人が少ないというより、雇用形態の問題である。
P.148にはまた憶測の文が続く。
2009年末でさえ、IMRTを設置したした保険のきく施設はわずかに40か所しかなかったのである。これらの施設がすべて高線量を照射する技術をもっていたとは思えない。それでは、現在、どうなっているか調べようということで、がん情報サービスのがんの種類から探すのページで前立腺がんをチェックして日本全国でIMRT治療を実施している病院を数えた。 187 である。(2014年10月の値)
これはがん診療連携拠点病院他の422病院が対象なので、IMRT治療可能な病院は187より多い。
現在では「わずか」という形容詞は不適切だと思う。
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