藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』について その5ー3 高リスク群Aとは?

昨日、音楽indexに引き続き、前立腺がんindexを作り始めた。この連載の藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』についてはすべてリンクした。私自身が前の記事の参照に支障をきたしたのが作成の動機だ。
最初にリスク分類に書かれている治療法に関して「目安」という言葉が使われているという指摘とその理由(多分に偏見のある推測ではあるが)をその4-1に書いた。
しかし、P.268にはこう書いている。
本書では中リスク群Bと高リスク群Aの患者には、もっとも根治性の高いブラキかHDRに外部照射を併用する治療法を推奨したい。
ここでは推奨という言葉を使っている。もともと本の副題が「最善医療のすすめ」となっているので、「ブラキかHDRに外部照射を併用」を推奨しているのだろう。しかしリスク群分類表には推奨される治療法とは書かず、「治療法の目安」と書く。以下本ブログではP.268のように目安と書かず、推奨と書いていこう。

さて、リスク群分類表に書かれている推奨治療法の主役であるブラキであるが、それを推奨していることの問題として一番にあげられるのは、は小線源療法を導入している全国病院リスト 前立腺がんの小線源療法 日本メジフィジックス株式会社でその実施している病院をしらべたところ、113しかなく、山形県、和歌山県、佐賀県にはブラキを行っている病院は無いということだ。この県に住む人は推奨治療法を受けるためには他県にいかなければならない。最善の治療を受けるにはそれぐらいのことを行うべきだという考えだろう。

P.112~P.113に次のように書かれている。
その病院がどれくらいの年間治療例をもっているかが、もっとも重要な判断材料になる。年間に合計して20例や30例の治療例しかもっていない病院は、心細いといわざるをえない。
できれば100例程度の年間治療経験をつんでいる施設を選びたいが、地方都市はこの基準をクリアするのはむずかしいだろう。しかし、せめて年間にそれぞれの治療法を40~50例ぐらいこなす病院を選びたいものである。
読売新聞のデータとネットの情報よりブラキ治療数上位の病院を調べて表にしたことがあった。
小線源治療数上位病院
治療数40以上の病院は19しかいない。ブラキを希望し、県内にこの条件に当てはまらない場合も最善の治療をもとめて、他県の病院で治療をしなければいけないのだろうか。

ここで、高リスク群Aの定義を再掲する。
高リスク群A:PSAが20以上で、グリソンが8以上

藤野さんの本に唯一治療成績、PSA非再発率のグラフがP.169載っている国立病院機構東京医療センターとこれもブラキによる治療実績のある国立病院機構埼玉病院の2003年から2009年の高リスクの患者206人の治療成績を報告した論文 1) をみてみる。
高リスクの因子が2及び3の患者はわずか20人(9.7%)だったということだ。これは藤野さんの定義する高リスク群A PSAが20以上で、グリソンが8以上に分類される患者の数はこの20より少ないと思われる。なぜならば、T3a、グリソンが8以上の場合及びT3a、PSA20超も高リスクの因子は2であり、これは高リスク群Aに入らないからだ。

もうひとつ論文をみてみる。藤野さんの本で患者の例であげられていた昭和大学の論文 2) である。2005年~2014年に治療を受けた高リスクの患者95人が対象である。高リスクの因子が2及び3の患者は27人(28.4%)である。
いずれにしろ、極めて少ない数、高リスクでの少ない割合であり、高リスク群Aという定義をした理由はなんなのだろうか。単にリスクの因子が多いものにもトリモダリティが推奨治療ということをいいたいだけだろうか。

1) Ohashi T et al. Radiat Oncol. 2014 Jan 9;9:13.
2)森田將他 泌尿器外科 28(8): 1323 -1324 2015

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