藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』について その5ー1 リスク群分類に当てはまらない場合あり

藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』についての話の続きである。
さて、一等問題だと思うP.98「悪性度よる分類と治療法の目安」の項にやっとたどり着いた。この項の最初に藤野さんはこう書いている。
本書の悪性度による分類では、一般に使用されている分類法とちがって、中リスク群と高リスク群をそれぞれAとBのふたつにわけることにしたい。そのほうが現在の進展した治療レベルによりふさわしい。
この「現在の進展した治療レベルにふさわしい」といっているが決してその目安となる治療法を裏付ける臨床試験などがあると限らないことを指摘しておこう。
もちろん、その4に書いたように、医学的な根拠の有無ということで、いままで以上に調べ、書いていくといつまでも終わらないので、表現の自由の一環で書いていく。

少し長くなるが、P.99の「本書のリスク群分類と治療法の目安」と題された表を表形式でなく、少し分りにくいが以下に紹介する。

低リスク群 PSAが10以下で、グリソンが6以下
治療法の目安 待機療法、開放手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術、ブラキ、IMRT(外部照射)

中リスク群A PSAが10~20でグリソンが6、またはPSAが10以下でグリソンが7
治療法の目安 待機療法、開放手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術、ブラキ、IMRT(外部照射)重粒子線、陽子線(粒子線療法は欧米の治療ガイドラインでは標準治療になっていない)

中リスク群B PSAが20以上で、さらにグリソンが7
治療法の目安 ホルモン療法+ブラキ、ブラキ+外部照射、トリモダリティ

高リスク群A PSAが20以上で、グリソンが8以上
治療法の目安 トリモダリティ

高リスク群B 周辺臓器、リンパ節、骨、遠隔部位に転移がある
治療法の目安 ホルモン療法、のちに化学療法

ここでこの分類に当てはまらない例を一つあげる。それはPSAが5でグリソンが8の人である。NCCNリスク分類 1)ではこの場合、高リスクに該当するが、この場合どの分類に入るのであろうか。
P.98にはこう書かれている。
なお、PSAはあくまでも一般的な基準で、現実にはPSAが10以下でもグリソンが中リスク群に相当することがあり、その反対にPSAが10~20でも、グリソンの結果が低リスク群に相当する場合がある。
このことはきちんとこの分類に入らない場合はグリソンによる分類に従うといっているのだろうか。先に私があげた例は高リスク群Aに該当するのだろうか。
このような分類をするとしたら、PSAが25でグリソンが6の人は低リスクということだろうか。なお、この場合は、NCCNリスク分類では、高リスクに分類される。

表に載っていない例外があり、その例外に対してどのように分類されるのか、はっきりと書いていないのは不十分な分類であるといえる。


1) NCCN分類に関しては前立腺癌診療ガイドライン 2012年版 の資料1 前立腺癌のリスク分類を参照のこと。

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